【徹底解説】PoEの規格について|最新規格や選ぶときの注意点
※この記事は製品や技術にまつわるお役立ち情報=豆知識を意図しておりますことから、弊社製品以外の製品や市場一般に関する内容を含んでいることがあります
「PoE=Power over Ethernet」であり、LANケーブルを通じてイーサネット機器に電力を供給する技術を指します。ケーブルで電力供給することにより、電源を確保するのが困難な場所で使用する機器にも電力を届けることができるようになります。
現在のPoE規格では供給可能な電力も増加しており、それとともに接続可能な機器の種類が大幅に増えています。最新のPoE規格について、そして規格選びの注意点についても解説します。
PoEの規格
IEEE802.3af
LANケーブルを通してネットワーク接続された機器に電力を供給する技術の1つがIEEE802.3afですが、標準規格とされているのがこの規格の特徴です。2003年に、米国電気電子技術者協会による標準化されました。
802.3afの性能としては、1ポート48Vの電圧で最大15.4Wの電力供給ができます。また、給電機器は802.3af準拠の受電機器を検知して給電開始したり、LANケーブルの切断を検出して給電停止したりすることもできます。
IEEE802.3at
消費電力がより大きな機器に対応可能です。802.3afの拡張版ということで、「PoE plus」という呼ばれ方をすることもあります。
IEEE802.3atのPoE規格では、1ポートあたりで最大30Wまで電力供給を行うことができます。従来の802.3afと下位互換性があるのも特徴です。
2種類の違い
これらはいずれもLANから電力供給できる技術で、無線アクセスポイントなどに用いられるものです。供給可能な電力の量が両者の違いとなります。この供給能力の違いは、使用ケーブルの違いによるものです。
802.3afはCat3(カテゴリ3)以上のLANケーブル、802.3atはCat5e以上のものが必要です。後者のほうが、抵抗値が低く、抵抗が少ない分だけ供給可能な電力量も多くなります。
一般家庭で使用するなら、標準規格の802.3afでも問題なく使用できるはずです。ただし、長時間電力を大量に利用することとなる企業や店舗などでは、802.3atを使用するのがベターでしょう。
PoE最新規格のIEEE802.3btとは?
IEEE802.3btとは?
PoEの最新規格としてリリースされたIEEE802.3btの最大の特徴は、なんといっても電力が増えていることです。「PoE++」とも称されます。性能としては、給電機器から90Wの電力供給ができて、受電機器では71.3Wまで受電できるようになっています。
さまざまな機器との接続が可能な点が強みといえます。電力供給量がアップしたことにより、対応可能な機器の幅もさらに広がりました。802.3btを利用すれば、高機能な監視カメラやスマート照明などとの接続が可能です。
IEEE802.3af、IEEE802.3atとの違い
PoE最新規格であるIEEE802.3btと、従来規格であるIEEE802.3afやIEEE802.3atとの相違点を2つ取り上げます。前項でも触れていますが、1つ目は電力の大きさです。高出力版の 802.atでも最大で25.5Wと比較的小さく、消費電力が数十Wを超える機器を動かすは困難でした。しかし最新規格の802.3btでは90Wまで送電できるので、LANケーブル1本でより大容量の機器や装置を動かすことができるように進化しています。
2つ目の違いは、電力を送る際に使用するケーブルです。802.3afや802.3atの場合はケーブル内4ペアのうち2ペアを使用するのに対して、最新規格では4ペア全部を用いて送電します。4ペア使用することによって高電力の送電を実現しているうえ、ケーブルでの電力損失も減少しているのです。
PoE規格を選ぶ際の注意点
まず受電機器の電力クラスに注目しましょう。電力クラスとは給電機器から受電機器に対してどれくらい送電できるのかを規定したもので、0~4までのクラスに分類されています。
供給電力の違いがあるため、給電機器と受電機器の組み合わせについても考えなくてはなりません。注意すべきなのは、「給電機器802.3af×受電機器802.3at」の組み合わせです。給電機器802.3afでは、より大きな電力を要する受電機器802.3atに十分な電力を供給することができないためです。
供給電力の違いは、使用ケーブルの種類にも影響します。802.3afではCat3以上のLANケーブル、802.3atではCat5e以上のLANケーブルが必要だというのも知っておきましょう。
まとめ
無線LANアクセスポイントやWebカメラ、IP電話など、天井や壁に設置することが多い機器については、見た目やコストの点から省配線のニーズが高く、PoEに対応可能な機器が増えています。最新規格のIEEE802.3btでは最大90Wの電力が送れるということで、ますます注目を集めています。PoE規格を選ぶ際には、給電機器と受電機器の組み合わせやその電力クラスに配慮しましょう。