データセンターの空調の種類は?空調の重要性から選び方・トレンドまで解説
※この記事は製品や技術にまつわるお役立ち情報=豆知識を意図しておりますことから、弊社製品以外の製品や市場一般に関する内容を含んでいることがあります
AIやクラウドサービスの普及に伴ってデータセンターの需要が増加し、そこで稼働するIT機器の過熱を防ぐための空調システムの重要性も高まっています。データセンターを安定的かつ効率的に運用するためには、空調システムの種類やトレンドを押さえておくことが欠かせません。
この記事では、データセンターの空調システムの種類や選定のポイント、現在のトレンドなどを分かりやすく解説します。
目次
データセンターにおける空調の重要性
データセンターのサーバーやストレージ、ネットワーク機器などは、大量の熱を発生させます。この熱を適切に取り除かないと、機器の誤作動や故障の原因となり、システム停止やデータ消失などの重大なトラブルを引き起こしかねません。
そのため、データセンターには設置されている機器を適温・適湿に保ち、安定稼働させるための空調システムが不可欠です。
近年は、省エネ性に優れた空調システムが数多く登場しており、適切な設計と制御によってエネルギー消費の削減が可能になりました。データセンターの空調は、安定した運用とコスト削減の両面で非常に重要な役割を果たしています。
データセンターの空調システムの種類
データセンターの空調には、仕組みや冷却方法によってさまざまな種類があります。代表的な空調システムの種類は以下の通りです。
コンピュータールームエアコン(CRAC)
CRACは、空冷方式の空調システムです。冷媒を用いて空気を冷却し、送風機で冷風を機器に送り込みます。
コンピュータールームエアハンドラー(CRAH)
CRAHは、水冷方式の空調システムです。チラーで生成した冷水によって冷やした空気を、送風機でデータセンター内に送り込みます。
In-Row空調
In-Row空調は、サーバーラックの列間に設置する空調システムです。機器の吸排気口に近い位置から冷風を送れるため、高い冷却効果が期待できます。
フリークーリングシステム
フリークーリングシステムは、外気を取り込んで冷却する省エネ型の空調システムです。寒い地域や冬季などの外気温で冷却が可能な環境では、大幅に電力を削減できます。
その他
上記の他にも、発熱する機器を冷水で直接冷やすダイレクトリキッドクーリングや、サーバーを絶縁性のある液体に浸す液浸冷却など、さまざまな冷却システムが開発されています。
データセンターの空調システム選定のポイント
多彩な種類がある空調システムの中から、自社のデータセンターに適したシステムを選定する際には、いくつかの重要なポイントがあります。
冷却能力
まず、データセンターの規模やサーバー密度に応じた冷却能力を持つ空調システムを選ぶことが不可欠です。高密度に集積されたITラックからの発熱には、それに見合った大容量の空調システムを導入しなければなりません。
エネルギー効率
空調システムは多くの電力を消費するため、長期的な運用コストを抑えるためには、エネルギー効率も重視する必要があります。フリークーリングシステムなどの省エネ技術を採用すれば、空調に要する電力の削減が期待できるでしょう。
可用性
24時間365日稼働し続けるデータセンターでは、空調システムの可用性も重要な要素の一つです。冗長構成によるトラブルへの備えや、メンテナンス時のダウンタイムの低減により、データセンター運用への影響を抑えられます。
拡張性
将来的なデータセンターの施設拡張に対応できる拡張性も重要です。フレキシブルな設計で、機器の増設やフロア拡張などに対応できる柔軟性の高い空調システムを選ぶとよいでしょう。
初期コストと運用コスト
初期コストと運用コストのバランスを考慮することも不可欠です。高機能な最新の空調システムは、初期コストはかさみますが、省エネ効果が高く長期的に見れば運用コストを大幅に抑えられる可能性があります。TCO(総保有コスト)を踏まえた判断が重要です。
データセンターの空調システムのトレンド
最後に、今後どのような種類の空調システムが主流となっていくかを考える上で押さえておきたい、空調システムのトレンドを紹介します。
近年の空調システムは、省エネや環境対策が大きなトレンドです。
省エネの観点では、空調機自体の効率向上に加え、AIやIoTを活用した高度な制御システムの導入が進んでいます。収集したデータに基づき、AIが最適な温度・湿度管理を行うことで、無駄な電力消費の抑制が可能です。
環境対策の観点では、再生可能エネルギーの活用が重視されています。太陽光や風力などのグリーンエネルギーを、データセンターに直接導入したり、第三者から購入したりすることで、CO2排出量を削減可能です。
また、革新的な冷却技術の一つとして、液浸冷却の実用化が進んでいます。ラックをオイルなどの液体に浸して直接冷やす技術で、従来の空調よりもはるかに効率的に熱を除去可能です。
このように、データセンターの空調システムは、省エネや環境対策がトレンドとなっており、新冷却技術の実用化も進んでいます。
まとめ
データセンターの安定運用には、効果的な空調システムの導入が欠かせません。
空調システムには、CRACやCRAH、In-Row空調、フリークーリングシステムをはじめとした、さまざまな種類があります。これらの中から、自社のデータセンターに適した空調システムを選ぶためには、冷却能力はもちろん、エネルギー効率や可用性、拡張性などを考慮し、コストとのバランスなどを踏まえた総合的な判断が必要です。
さまざまな種類の空調システムの中から、自社のデータセンターの特性やニーズに合ったシステムを選びましょう。