データセンターが抱える課題とは?排熱問題の解決事例を紹介!
※この記事は製品や技術にまつわるお役立ち情報=豆知識を意図しておりますことから、弊社製品以外の製品や市場一般に関する内容を含んでいることがあります
データセンターは、デジタル社会を支える重要なインフラですが、その運営にはいくつかの課題が存在します。特に、サーバーの稼働によって発生する排熱は、適切に管理しなければ環境負荷や運営コストの増加につながる問題です。
本記事では、データセンターが抱える排熱問題について詳しく解説します。効果的に排熱を再利用する先進的な事例にも触れ、今後のデータセンター運営に向けた解決策を探っていきます。
目次
データセンターの排熱問題について
この章では、データセンターにおける排熱問題の原因や、影響について解説します。
データセンターは多くの電力を消費している
データセンターは、他の建物と比較して非常に多くの電力を消費しています。情報サービス産業協会の報告によれば、2014年度におけるオフィス部門の消費電力量は約3億kWhであったのに対し、データセンター部門では約11.1億kWhと、4倍近くの差がありました。
この大規模な消費は、サーバーの稼働や冷却設備などによるもので、エネルギー効率の向上や再生可能エネルギーの活用が環境対策として急務となっています。
データセンターの排熱問題
データセンターでは、サーバーの高性能化と小型化が進み、ICT機器の密度が増加したことで、単位面積あたりの発熱量の急激な上昇が続いています。高密度化による排熱問題は、サーバーの故障や誤作動のリスクを高めるため、安定した冷却が不可欠です。
しかし、冷却設備の増設や運用に必要な電力消費が増加し、それに伴う運営コストや環境負荷が大きな課題となっています。
その他のデータセンターの課題
高密度化による排熱問題にともない、データセンターではさまざまな課題が浮き彫りになっています。
ホットスポット
データセンターでは、ICT機器の稼働により局所的に温度が上昇するホットスポットが課題です。ホットスポットのみを限定して冷却できない空調システムでは、データセンター全体を冷却するしかなく、その結果無駄な電力を消費します。
ホットスポットを放置すると、サーバーの性能低下や故障のリスクも高まるため、エネルギーの無駄を削減できる効率的な冷却システムの導入が必要です。
過剰投資
データセンターは、サーバーや設備が増加することで管理が複雑化し、余裕を持った計画が求められることから、過剰な設備投資が発生しやすくなります。しかし、必要以上の設備導入は、コスト増加やエネルギーの無駄を招くため、稼働状況を適切に管理することが大切です。
設備の過剰投資を避けるには、現状の稼働状況を定期的に見直し、効率的な運用を図る必要があります。
スペースの不足
データセンターでは、サーバーの増加により空調や電源設備の容量が追いつかず、ラックを追加することが難しいことがあります。また、サーバーが集中したラックでは、設備に余裕があっても床荷重が増大することで、建物の構造上、追加で設置できないケースも多いのが現状です。
そのため、効率的な空調システムの選定や、屋外設備の配置計画を慎重に検討する必要があり、スペース不足が深刻な課題となっています。
データセンターの排熱を再利用している例
エネルギー効率を向上するため、データセンターの排熱を有効活用する取り組みが世界中で進んでいます。ここでは、データセンターの排熱を再利用している先進的な事例を紹介します。
インフラ利用
北欧ノルウェーのベルゲン近郊では、データセンターの排熱を街のインフラに転用し、床暖房や地域全体の暖房システムに活用する計画が進行中です。
液体冷却システムを用いて、データセンターからの熱を都市部に供給し、循環させることで、生産エネルギーが消費エネルギーを上回る新たな街をつくることを目指しています。
温水プール
イギリスには、データセンター内のサーバーから発生する排熱を鉱油によって回収し、プールを温めるための熱源として利用している例があります。データセンターが排出する熱を効果的に活用し、環境負荷を軽減することが可能です。
燃料費が高騰する中、温水プールの運営コストを大幅に削減しつつ、持続可能な運営に貢献するモデルとして注目されています。
暖房施設
フィンランドで建設中のデータセンターでは、排熱を周辺地域の暖房に利用する計画が進められています。2025年から排熱を地域暖房ネットワークに供給し、家庭や学校などの暖房に役立てる予定です。
地域の年間暖房需要の大部分が賄われ、エネルギー効率の向上とCO2排出量の削減が期待されています。
まとめ
データセンターが直面する排熱問題は、運営コストや環境負荷に影響を与える大きな課題です。しかし、先進的な排熱再利用の事例を取り入れることで、効率的なエネルギー活用とコスト削減が可能です。
こうした技術の進歩により、今後さらなる持続可能なデータセンターの運営が期待できるでしょう。