行政で導入されているLGWANとは?
※この記事は製品や技術にまつわるお役立ち情報=豆知識を意図しておりますことから、弊社製品以外の製品や市場一般に関する内容を含んでいることがあります
LGWANとは、地方公共団体や国の機関が機密性の高い情報を安全に扱うための専用ネットワークです。
本記事では、LGWANに関する基本知識や仕組みについて解説しています。
LGWANに対する理解をさらに深めたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
LGWANとは
LGWANとは総合行政ネットワークと呼ばれるもので、全国の地方公共団体が利用する通信網を相互に接続した行政専用のネットワークを指しています。
一般的なインターネット回線とは分離された形で構築されており、高レベルなセキュリティを確保した閉域ネットワークとして運用されている点が特徴です。
LGWANの目的
LGWANの目的について、要点を以下にまとめてみました。
- ・全国の地方公共団体が有する庁内LANを相互接続する
- ・地方公共団体の相互のコミュニケーションを円滑にする
- ・情報の共有と高度利用を推進する
LGWANは2001年から運用がスタートしていますが、2007年にはすべての都道府県・市区町村が接続を完了させ現在の運用に至っています。
LGWAN構築の基本指針
LGWAN構築の際には8つの基本方針が策定されました。
通信網についての内容でポイントとなるのは、高レベルのセキュリティ機能を確保する、情報通信分野における標準的な技術を採用するといったものです。
また、費用の面においても基本方針が策定され、「すべての地方公共団体が現実的に負担できる費用で運用する」、「保有する既存設備を有効利用する」といった内容が盛り込まれています。
LGWANで利用可能なサービス
LGWANで利用可能なサービスとしては、以下のようなものがあります。
- ・LGWANポータルサイト
- ・基本アプリケーションとサービス
- ・LGWAN-ASPサービス
- ・府省サービス
LGWANポータルサイトでは日々の運用情報やお知らせ、規定文書などを閲覧できます。
基本アプリケーションとサービスは運営から提供されるもので、総合行政ネットワーク変更届出やLGWAN掲示板及びメーリングリストサービスなどが利用可能です。
LGWAN-ASPサービスについては記事の後半で詳しく解説します。
府省サービスは政府共通ネットワークを経由して提供されるもので、国税電子申告・納税システム(e-Tax)や登記・供託オンライン申請システムなどが代表的なサービスです。
LGWANのメリット・デメリット
次にLGWANのメリット・デメリットについて解説していきましょう。
メリット・デメリットとされる内容は下記の通りです。
メリット①重複投資の抑制
LGWANは、各地方公共団体の個別業務にとらわれない汎用的なネットワークとして構築されています。
そのため、それぞれの地方公共団体がネットワークに対して新たに投資する必要がなく、維持・運営の面においてもコスト削減が可能です。
最終的には各地方公共団体が行う重複投資の抑制効果につながります。
メリット②行政連携の効率化
LGWANは各地方公共団体の相互接続以外に、政府共通ネットワークとの接続も確立しています。
国が保有する情報も含めて広範囲な情報収集と情報共有が可能となったため、行政事務のさらなる効率化が可能です。
同時に行政連携の取り組みも効率化できます。
メリット③市町村サービスの向上
LGWANのメリットとして、市町村サービスの向上も挙げられます。
LGWANを導入することで、申請や届出などの手続きが電子化するため、従来よりもスムーズに進めることができるのです。
国と地方公共団体で一体化された行政サービスの提供が可能になり、住民サービスの向上につながります。
外部インターネットとの切り離し
LGWANの大きなデメリットはありませんが、外部インターネットとの切り離しがきっかけで課題が発生する可能性も考えられます。
一般的なインターネット網と隔離されたLGWANは、双方向における直接的なファイルのやり取りはできません。
ファイルのやり取りを行う際は別のシステムを通すような対策が必要となり、それにともなう手間とコストがかかります。
LGWANの仕組み・接続
続いてLGWANの仕組み・接続方法について解説を進めます。
まずはLGWANを構成している各要素について見ていきましょう。
LGWANを構成する要素
LGWANを構成する主な要素は以下の4つに分類できます。
LGWAN接続ルーター |
庁内LANとLGWANを接続する機器 |
都道府県ノード |
各都道府県に設置される回線接続用機器、地域の接続団体およびLGWAN-ASP サービス提供者のアクセス回線が対象 |
西日本・東日本セキュリティGW |
すべての通信セキュリティをチェックし、政府共通ネットワークとの接続を担う |
全国ネットワークオペレーションセンター |
LGWANを運営・管理する設備 |
以上に挙げた要素は、2019年から運用を開始した第4次LGWANのものです。
地方公共団体がLGWANに接続する際は、「都道府県ノード経由冗長方式」と「直接接続方式」、もしくは2つを合わせた「ハイブリッド方式」から選ぶことになります。
「三層分離モデル」と接続について
総務省からの提唱により地方公共団体のネットワーク構築は、「三層分離モデル」に従った環境にしなければなりません。
「三層分離モデル」の三層とは、以下に示した3つの業務を行うためのネットワークです。
個人番号関係事務
住民の個人情報を取り扱う領域で、住基ネットに接続されるネットワークです。
高レベルなセキュリティを確保する上で、ほかのネットワークとは完全に隔離された通信網になります。
情報流出を防ぐため、厳しい運用基準が設けられている点も大きな特徴です。
地方公共団体を維持するための事務関連
地方公共団体を維持するための事務を遂行する領域で、LGWANに接続して業務を行うネットワークになります。
こちらもほかのネットワークとは完全に隔離されている通信網です。
個人番号関係事務と同程度の厳しいセキュリティ要件が存在します。
自治体ホームページ
自治体ホームページを運用したりメール確認を行ったりする領域で、通常のインターネット回線に接続して業務を行います。
セキュリティレベルを高めるために、自治体情報セキュリティクラウドを通して運用される通信網です。
LGWANの情報セキュリティ対策
LGWANの情報セキュリティ対策となる、5つの項目について解説していきます。
通信経路の暗号化による盗聴防止
LGWANの通信経路を暗号化することで、盗聴を防止することができます。
侵入検知機能(IDS)
不正アクセスを検知する対策です。
地方公共団体同士や都道府県ノードでの直接通信を制限しつつ、侵入検知機能(IDS)で常に監視しています。
SOCの設置
SOC(セキュリティ・オペレーション・センター)を設置して、24時間365日におよぶ専門家の監視を行っています。
公開鍵暗号方式(PKI)による組織認証の実施
認証技術を悪用した「盗聴」「改ざん」「なりすまし」「事後否認」の対応策として実施されています。
ファイアウォール防御
LGWANで使用されるサーバー内にファイアウォールを設置し、侵入の脅威に対する対応策としています。
LGWAN-ASPとは
最後はLGWANで利用可能なサービスのひとつ、LGWAN-ASPについて解説していきます。
LGWAN-ASPについて
LGWAN-ASPとは、公益法人や民間事業者などが開発したアプリケーションやコンテンツサービスを、LGWANを通して地方公共団体に提供するシステムです。
そして、経済的かつ標準的なシステムの導入を期待しています。
LGWANーASPのメリット
地方公共団体は新たな回線や端末を設置せずにサービスを利用できるため、運用・保守の集約や管理業務の効率化に期待できます。
システムを独自に開発する必要がなくなり、想定されるコストを削減することも可能です。
クラウドを活用したアプリケーションを導入すれば、業務の継続性を高めることにもつながります。
LGWAN-ASPのデメリット
地方公共団体がLGWAN-ASPを活用するためには、LGWANとLGWAN-ASP、双方への理解が必要になります。
あえてLGWAN-ASPのデメリットを挙げるならば、導入を実現できる知見とノウハウが求められる点でしょう。
LGWAN-ASP導入事例
LGWAN-ASPで提供されているシステムの導入事例について一部を紹介します。
システム名称 |
導入で見込める効果 |
電子決済システム |
● 決裁スピードの向上や業務効率化 ● ペーパーレス化によるコスト削減 |
テレワークシステム |
● 高レベルのセキュリティ環境 ● 場所を問わない働き方が可能に |
ふるさと納税システム |
● 寄付情報の一元管理 ● 初期費用が安く導入までの期間も短縮 |
このほかにも電子申請システムや文書管理システムなど、2024年3月時点で1,313件におよぶアプリケーションが登録されています。
まとめ
LGWANは総合行政ネットワークと呼ばれる行政専用の閉域通信網です。
全国の地方公共団体が利用する通信網を相互に接続し、円滑なコミュニケーションの実現を目的に構築されました。
LGWANを利用すれば地方公共団体同士の情報共有が可能になり、行政連携の効率化や市町村サービスの向上に期待できます。
注意したいのはLGWAN運用の際に、高レベルなセキュリティ対策への知見とLGWAN-ASPの活用が必要となる点です。
運用までに理解すべきポイントは多いですが、本記事の情報も参考にしてLGWANへの取り組みをスタートさせてみてください。