市庁舎のITインフラを整えることは自治体にとって今後の課題の一つ
※この記事は製品や技術にまつわるお役立ち情報=豆知識を意図しておりますことから、弊社製品以外の製品や市場一般に関する内容を含んでいることがあります
現在、日本各地にある市庁舎は老朽化が進んでおり、改築などが進められています。IT関連機器も建物と同様に古くなっていくため改修が必要です。それらを同時に改築や改修を行うことで、ITインフラを効率的に整えることができるようになります。
今回は現在市庁舎が抱える問題と、ITインフラを整える必要性などについてご紹介いたします。
市庁舎の問題
各地方の市庁舎は老朽化により、様々な問題を抱えています。
・老朽化の問題
現在、多くの地方自治体は市庁舎を含む「老朽化した公共施設」の統廃合・インフラの⻑寿命化などに取り組む必要に迫られています。それは、総務省の発表した『公共施設等総合管理計画』に基づいた国策だからです。
全国的に市庁舎の建て替えニーズは⾼まっており、2020年以降にピークが来るといわれています。
・現在の公共施設が建設された時期
日本の公共施設の多くは、1950年〜1973年の高度経済成長期に建設されました。特に1970年前後に集中しています。これらの公共施設の中には、建設年度・構造形式・老朽化の進展状況などが不明な施設も数多く存在しています。そのため、大規模災害で倒壊する可能性も十分にあり、早急な対策が必要です。
・老朽化によって起こった問題
市庁舎の多くは、老朽化が原因で以下のような問題を抱えています。
● 耐震性能の低下
● バリアフリー問題
● ITインフラ未整備による住民サービスの低下、コスト増加、不十分な災害対策
第一に、老朽化による耐震性能の低下が大きな問題として挙げられます。部分的な補修で耐震性能を高めるには限界があるため、根本的な建て替えが必要です。
次いで、市庁舎の多くがバリアフリー化されていないことも問題です。
建設当時は現在ほど高齢者が多くなかったため、多くの市庁舎はバリアフリー化されていません。しかし、超高齢社会に突入した現代の日本において、住民の満足度を高めるためにもバリアフリー化は必須といえます。
そして、最も大きな問題はITインフラの未整備です。ITインフラが整っていないことにより、利用者の満足度は下がります。同時にアナログ業務によって、コストが増加してしまうのです。
またITインフラの未整備は、「災害対策が不十分であること」を意味します。
災害時、市庁舎は住民の避難場所に使用されることもあります。そこに集まった多くの人は、家族や友人、職場関係の人などとの連絡、最新の情報収集をおこなうためにスマートフォンを使用するでしょう。そのような時にフリーWi-Fiが市庁舎に導入されていれば、万が一、電話回線が機能しなくなったとしても、スマートフォンの使用が可能です。つまり、Wi-Fiのネット環境があることは、住民の不安軽減に繋がります。
避難場所としての機能を十分に果たすためには、フリーWi-Fiの導入の検討が必要です。
市庁舎のITインフラを整えるメリット
市庁舎のITインフラの中でも重要なのが、フリーWi-Fiの設置です。
フリーWi-Fiは、職員が効率よく業務遂行するためだけのものではありません。住民や訪れた人たちにとって様々なメリットがあるのです。
・観光の効果
市庁舎や公共施設にフリーWi-Fiを導入すれば、観光客増加が見込めます。
現代においては、誰もがスマホを使用して、場所を選ばず気軽にインターネットを楽しみたいと思っています。フリーWi-Fiがあれば、訪れた人は快適に過ごすことができるでしょう。今やフリーWi-Fiがあるかどうかは、地域住民や観光客(特に外国人)が施設・観光地を選ぶ重要な基準のひとつとなっています。
ところが、外国人を対象とした観光庁の調査では、「日本はフリーWi-Fiが少ない」という問題が明らかになっているのです。フリーWi-Fiのアクセスポイントが無いだけで、観光地候補から除外されてしまう可能性もあるでしょう。またフリーWi-Fiだけでなく、ポータルサイトや観光地情報を提供するアプリなどのシステム構築も効果的です。ITインフラをスタンプラリーやクーポン配信に活用している事例もあります。
地方自治体がITインフラを整えることで、観光客の満足度を上げることができるでしょう。
・防災の効果
市庁舎に無料Wi-Fiを設置することは、防災・減災にも大きな効果があります。災害発生時に効果的な通信を確保できることは大きなメリットです。
フリーWi-Fiが整備されていれば、災害時でも広範囲の情報収集が可能になるでしょう。災害の状況を詳細に把握できると同時に、各地域で柔軟な対応も可能になるのです。
また災害時は、市庁舎が住民の避難場所として使用されます。災害時は電話が通じなくなるため、避難住民の連絡手段の確保、確実な情報提供のためにもWi-Fi整備は有意義だといえるでしょう。
・住民への効果
市庁舎がITインフラを整えれば、住民サービスが向上します。フリーWi-Fiを設置するだけでも、市庁舎の利用者増加が見込めるでしょう。他にも、市庁舎のITインフラは「高齢者の見守りサービス」にも活用できます。
市庁舎がビッグデータに住民情報を登録し、保健師・看護師・訪問支援員などがビッグデータをもとに高齢者の自宅を定期的に訪問します。訪問先でタブレットなどから高齢者の健康情報を入力すれば、ビッグデータに訪問記録が蓄積していくという仕組みです。
データが蓄積すれば、訪問者も過去の訪問記録を参照しながら適切なサービスを提供できるようになるでしょう。
・利便性の向上
市庁舎のITインフラが整えば、窓口業務や各種申請手続きの利便性を向上させることが可能です。利用者の中には、体が不自由な高齢者や障害者、小さな子ども連れた方などもいます。複数の窓口を回って各種申請書の提出・証明書発行などの手続きをすることは、非常に大きな負担となります。
たとえば、職員がロビーで待つ利用者の元へ職員が巡回し、情報を聞き取ってタブレットで入力・窓口担当者と情報共有できるようにするとしましょう。たったそれだけでも、各申請書の受付・証明書発行などの業務効率を上げることができます。
結果として住民の満足度は上がり、市庁舎の利用率も上がるでしょう。同時に業務効率化による行政コスト削減にも繋がるのです。
市庁舎のITインフラの必要性
市庁舎にITインフラが必要な理由を解説します。
・市庁舎などの自治体クラウド活用状況
自治体クラウドとは、住民基本台帳・福祉・税務など「自治体の情報基盤」を外部のデータセンターで一括管理し、複数の自治体で共同利用する仕組みのことです。
これまで多くの自治体では、庁舎内に設置したコンピューターで個別にシステム構築し、それぞれ独自の方法でデータ管理・処理を行なっていました。
しかし、複数の自治体と共同でシステム利用すれば、システム構築・管理のコストを削減することができます。そのため、自治体クラウドを使用する自治体は年々増えているのです。
2019年の時点で、情報システムをクラウド化しているのは全国の約7割(1,182団体)になります。そのうち、自治体クラウドの利用は497団体でした。2018年に閣議決定された「世界最先端デジタル国家創造宣言」によると、2023年に自治体クラウドの利用を1,100団体に増やすことを目標としています。このように、地方自治体の自治体クラウド導入は国策なのです。
・自治体クラウドの必要性
自治体クラウドは、総務省が掲げる「スマート自治体」の実現に必要不可欠です。
2040年、日本は高齢者人口のピークを迎えます。同時に、少子化による労働人口の低下も起こるため、自治体はテクノロジーを駆使して少人数で効率的なサービスを提供できる仕組みを構築しなければなりません。
その仕組みこそが自治体クラウドなのです。
また自治体クラウドのメリットは、業務効率化・コスト削減だけではありません。地震などで市庁舎が被災した時の業務停止リスクを回避できるメリットもあります。
特に西日本においては、南海トラフ地震が2030年〜2040年に起こる確率が高いといわれています。その対策の一環としても、自治体クラウドの導入は急務といえるでしょう。
・市庁舎のITインフラの例
フリーWi-Fiの他にも、市庁舎のITインフラには以下のような例があります。
● 窓口システム
● デジタルサイネージ
● 無線LAN
窓口業務にITインフラを活用すれば、住民からの申請手続き・各種業務処理・証明書交付など一連の処理を全て電子的に行うことができます。
具体的には、以下のような流れです。
1. 窓口担当者が利用者にヒアリングし、申請書作成を代行(電子申請書に入力)
2. 電子申請書は庁内の電子申請システムを通じて業務主管部門に着信
3. 業務主管部門は電子申請書の内容に基づいて要件審査
4. 証明書を窓口で渡す
利用者は今まで手書きで行っていた申請書作成の手間を省くことができます。さらに、長い待ち時間・複数の窓口をたらい回しにされるストレスからも解放されるでしょう。窓口業務にITインフラを活用することで、利用者の満足度は大きく上がると同時に、窓口業務の効率化に繋がるのです。
また、市庁舎内のロビーに大型液晶ディスプレイを設置し、各種お知らせ・予約情報を表示する「デジタルサイネージシステム」もITインフラの代表例でしょう。
無線LANシステムもITインフラの1つです。古い市庁舎においては、インターネット接続を有線で行っていることも珍しくありません。職員が無線LAN機能を搭載したノートPCやタブレットを使えるようにすれば、庁舎内のどこでもデスク環境と同じように作業することができます。
職員が窓口内に固定される必要がなくなれば、利用者の負担を大きく減らすこともできるでしょう。
市庁舎のITインフラに必要なこと
市庁舎のITインフラを整えるためには、以下の3点が必要です。
1. セキュリティの向上
2. 職員のITリテラシーの向上
3. インターネット分離
・セキュリティの向上
市庁舎がITインフラを整備するためには、利用者が安心して使用できるようにセキュリティを強化する必要があります。
無料Wi-Fiの導入を例に挙げましょう。もし、セキュリティ対策をしないまま無料Wi-Fiを提供してしまうと、以下のようなリスクがあります。
● 通信内容が盗聴され、利用者のID・パスワードが盗まれる
● 迷惑メールの送信・掲示板などへの悪意ある書き込みに使われる可能性
● 第三者への攻撃等に悪用される恐れ
このようなリスクを防ぐには、強固な暗号化の設定・利用にあたっての認証方法の確立など、セキュリティを向上させることが必要です。
・職員の知識
職員の知識(ITリテラシー)を上げることも必要です。ITに馴染みのない世代の職員がITインフラに積極的でない、といったことがネックになりなかなか導入が進められない場合が多くみられます。未知のシステムに自分が適応できるかどうかの不安や、業務サイクルの変化にストレスを感じる職員も少なくないでしょう。
しかし、導入したITインフラを職員が使いこなせなければ、業務効率化も住民サービスの向上も実現できません。
職員の不安を解消すると同時に理解を深めてもらうことが、ITインフラのスムーズな導入には必要不可欠です。
・インターネット分離
ITインフラの導入にはインターネット分離も必要になります。ITインフラを導入すれば、常に第三者によるサイバー攻撃の脅威に晒されるからです。
インターネット分離とは、市庁舎におけるインターネットの接続環境と、内部の機密情報を含んだネットワークを切り離すことを意味します。
具体的には、以下の3つを切り離すことです。
1. インターネットを利用できるインターネット接続系
2. 行政専用ネットワーク(LGWAN接続系)
3. 住民情報など機密情報を扱うマイナンバー利用事務系
インターネット分離により、機密情報・個人情報を含んだ内部ネットワークへのサイバー攻撃をブロックすることができます。
一昔前ならセキュリティ対策は、アンチウイルスソフトウェアの導入やファイアウォールの設置で十分でした。しかし近年は、サイバー攻撃の手法が複雑化し、検知・防御が難しくなってきています。
インターネット分離であれば、複雑なサイバー攻撃のリスクにも対応できる可能性が高くなるでしょう。インターネット分離は文科省・経済産業省・総務省などからも推奨されているセキュリティ対策です。
まとめ
新市庁舎のITインフラには、多人数の同時アクセスにスピーディーに対応できる次世代無線LAN「Wi-Fi 6」の採用をおすすめします。
「Wi-Fi 6」の性能を引き出すには「Cat6A」配線が必要です。
パンドウイットは「Cat6A」の実績&信頼No.1です。新市庁舎の効果的なITインフラをパンドウイットがご提案・実現いたします。
参考
総務省「Wi-Fi提供者向け セキュリティ対策の手引き」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/security/cmn/wi-fi/Wi-Fi_manual_for_AP.pdf