公共施設(新庁舎)等に求められるLAN配線とは
※この記事は製品や技術にまつわるお役立ち情報=豆知識を意図しておりますことから、弊社製品以外の製品や市場一般に関する内容を含んでいることがあります
近年、省庁などの公共施設が軒並み建て替えの時期を迎えている。また、地震や台風といった自然災害の影響や時代とともに変化する利用者のニーズにあわせて、公共施設の設備も一新する必要が出てきている。
特に携帯電話やスマートフォンの急激な普及によって、インターネットを活用したサービスの提供が公共施設側にも求められる状況となり、LAN配線を含むインフラ整備も大きな課題のひとつだ。しかし、多くの人々が利用する公共施設においては、将来を見据えた可用性の高い情報通信ネットワークの構築ならびに、災害時に情報発信の基点となるための高い処理能力を持った物理インフラの構築が必須となるだろう。
そこで今回はパンドウイット(Panduit)のネットワークスペシャリストに、公共施設(市庁舎)のLAN配線を整備するメリットや必要性などについてお話を伺った。
目次
新庁舎等の公共施設のあるべき姿
近年、多くの公共施設が建て替えを迫られており、全国の自治体で対策が練られている状況だ。時代の移り変わりとともに、公共施設側に求められるニーズも大きく変わっているという。
「人口増加が急激に進んだ昭和40~50年代の高度経済成長期に建設された大量の公共施設が、現在一斉に更新のタイミングを迎えています。設備の老朽化に加え、耐震性能やバリアフリー性能の不足など多くの課題を抱え、早急な対応が必要です」
省庁によっては、バリアフリー機能やエレベーターの無い棟があることも。そのため、設備を一新しなければ、防災機能はもちろん、災害時の拠点としても機能しないことが懸念されるだろう。
「そもそも論にはなりますが、現行施設の耐震基準は『新耐震基準』と呼ばれる1981年の建築基準法の改正によるものです。しかし、2016年の熊本地震や東日本大震災から10年経過したことがきっかけで、耐震基準を見直す動きもみられます。そういった意味においても、現在は施設を建て替えるタイミングにきているといえるでしょう」
耐震性能の強化やバリアフリー、エレベーターの整備に加え、インターネット環境の整備など、建て替えを実施する際、施設側に求められる設備要件は多種多様だ。優先順位をつける必要があることは想像に難くないだろう。総務省からも、長期的な公共施設のマネジメントを推進するという観点から、公共施設等総合管理計画の見直し通達が出されている。
「令和3年の1月26日に、総務省から『令和3年度までの公共施設等総合管理計画の見直しに当たっての留意事項について』が出されました。それに伴って各地方公共団体においては『公共施設等総合管理計画』に基づき、公共施設の統廃合、長寿命化、転用などの具体的な対策に取り組まれており、全国的に新庁舎への建て替えニーズが高まっている状況です」
施設側は令和3年度中に、個別施設計画等を踏まえ「総合管理計画」の見直しが必須である。今回の対象は、計画期間や施設保有量、有形固定資産減価償却率の推移等の基本事項および、維持管理・更新などに係る経費、公共施設等の管理に関する基本的な考え方とのこと。
特に公共施設におけるユニバーサルデザイン化の方針は、今回改めて追加要請になった内容として注目されている。なお、バリアフリーと同軸で語られることが多いユニバーサルデザインだが、両者の性質は若干異なる点に注意が必要だ。
障害者や高齢者などの障害になる物理的な障壁を除外することがバリアフリーの考え方であることに対し、すべての人々が使いやすいものを提供することがユニバーサルデザインの考え方である。
耐用年数から見た投資優先順位
建物の耐用年数は財務省から出されている「減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和四十年三月三十一日大蔵省令第十五号)」によって、以下のように定められている。
・省庁、公民館など:鉄筋コンクリート50年、鉄骨コンクリート38年
・校舎、講堂、体育館、集会所、会議室:鉄筋コンクリート47年、鉄骨コンクリート34年
つまり、40年~50年という長期間において、設備投資の優先順位を決める必要があるということだ。
「設備投資の中で特に優先順位が高いと考えられるもののひとつが、LAN配線です。建物に付帯する設備として、建物の次に重要なカテゴリといえるでしょう。また、賃貸オフィスであれば移転のタイミングなどで最新ネットワークにアップデートできますが、公共施設の場合はそうはいかないため、数十年先を見据えて構築しておく必要があるのです」
さらに、令和2年5月22日には総務省より「自治体情報セキュリティ対策の見直しについて」の公表があり、効率性や利便性、セキュリティ面の維持・向上を目的とした具体的施策の検討を求められている状況だ。
「2015年に発生した年金機構の情報漏えいと、新型コロナウイルスの影響で配布された給付金対応作業が非常に煩雑だったことなどから、いわゆる『三層の対策』に見直しが入りました。セキュリティ面は堅牢になったものの、各ネットワークが分離されたことにより、作業効率や手続きの利便性が大幅に下がったところもあったようです」
「三層の対策」とは「三層分離」とも呼ばれ、業務用のデータ保管システムとサービス提供領域との接続を分離する考え方で、
・マイナンバーや個人情報を利用する業務
・自治体としての通常業務
・インターネット上のサービスや手続き
の3つの領域を分離することによって堅牢なセキュリティを担保していた。
「まず、マイナンバー利用事務系の見直しが必要です。基本的には他の領域と分離を図りつつも『eLTAX(エルタックス)』や『ぴったりサービス』などの特定通信に限っては、ネット申請を可能にするなど手続きのオンライン化に対応しなくてはいけません。また、すでに分割化されているLGWAN(総合行政ネットワーク)接続に関しては、インターネット接続側に業務端末やシステムを配置した『βモデル』と呼ばれる新たなモデルを採用することで、業務の利便性を上げる必要があるとされています」
さらに、業務の効率性や利便性を向上するために、
・内部環境からパブリッククラウドへの接続を可能にする
・内部環境へリモートアクセスを可能にする
・庁内無線LANについて、安全な実施方法を検討・整理する
といった施策を民間のクラウドベースのソリューションを活用しながら実現する必要があるそうだ。したがって、省庁などの公共施設におけるLAN配線は、長期間にわたって様々な施策を投じることも想定して準備しておく必要があるだろう。
「ネットワーク機器(スイッチ、無線アクセスポイント)は更新時の取替えで最新機器に変更できますが、LAN配線の取替えには膨大なお金と時間がかかります。そのため、途中で配線を変更することは非現実的です」
今後ますますインターネットの利用頻度が上がることを考慮すると、信頼性が高く臨機応変な施策に対応可能なLAN配線を選ぶ必要がありそうだ。
年々速度が速まる無線LANへの対策とは
利用者ニーズが高まっていることもあり、公共施設におけるWi-Fiの活用は今や当たり前といえるだろう。特に全国の自治体では観光の振興や防災、行政サービス向上という目的でWi-Fiが有効活用されている状況だ。
「自治体の各種施設にフリーWi-Fiを設置し、Webサイトやアプリなどで手軽に観光情報が取得できるようになることで、訪日外国人が快適に過ごせるようになります。新型コロナウイルスの問題がクリアになれば、再びインバウンド需要が高くなることが予想されますので、それまでには対応しておきたいところでしょう。
また、近年の地震や台風といった自然災害が発生した際にも、インターネットは非常に重要なインフラとなるため、Wi-Fiの重要性が非常に高くなります。さらに、各省庁や図書館、公民館といった公共施設でフリーWi-Fiを利用可能にすることや、各種手続きや申請、高齢者の見守りサービスなどにも活用可能です」
各種サービスの利便性や公共施設の利用率向上に繋がるなど、自治体施設へのWi-Fi導入は大きなメリットがあるといえよう。しかしその一方で、Wi-Fiはバージョンアップを繰り返し、年々機能や速度が高まっている状況だ。そのため、施設側での最新情報のキャッチアップが随時必要になるだろう。現在も最新のWi-Fi6という規格が浸透しつつある。
「近年、主流になりつつあるWi-Fi6は、これまでのWi-Fiと比べて飛躍的に機能や速度が向上しています。Wi-fi4~6の大まかな特徴は、次の通りです。
項目/Wi-Fi名 |
Wi-fi4(802.11n) |
Wi-Fi5(802.11ac) |
Wi-Fi6(802.11ax) |
周波数帯 |
2.4 GHz または 5 GHz |
2.4 GHz または 5 GHz |
2.4 GHz と5 GHz 6 GHz 帯対応 |
最大データレート (理論値) |
576 Mbps |
6933 Mbps |
9607.8 Mbps ~ 10 Mbps |
空間ストリーム数 |
4 |
8 (理論上は 4 を超 える可能性は低い) |
8
|
ビームフォーミング |
対応 |
対応 |
対応 |
ケーブル要件 |
Cat6(カテゴリ6) |
Cat6A(カテゴリ6A) |
Cat6A(カテゴリ6A) |
Wi-Fi6はWi-Fi5に比べ約1.4倍高速化しており、これまで未対応だった6GHz帯の周波数帯にも対応している点が大きな特徴といえるでしょう。また、Wi-Fi6にはOFMDA(Orthogonal frequency-division multiple access:直交周波数分割多元接続)という技術が採用されているため、同時に複数のデバイスで通信が行えるようになった点がメリットです」
Wi-Fiの規格が最初に登場したのは1997年で、約20年の間に6回ものバージョンアップが行われた。今後も数年単位でバージョンアップされることは間違いないだろう。すでに次世代のWi-Fi7についても、大幅なスペックアップが予定されているという。
「Wi-Fi6 と Wi-Fi7 は、現在 2.4 GHz および 5 GHz の周波数帯でのみ動作が可能です。しかし、次世代の Wi-Fi7は超ハイスループット(EHP) と呼ばれており、6GHzの周波数帯も利用可能になることで、Wi-Fiに利用可能な帯域幅が実質5倍程度まで広がるといわれています。
さらに、狙ったデバイスにピンポイントに電波を届けるビームフォーミングの強化や、大規模マルチ入力マルチ出力(MIMO)の採用なども検討されており、大幅な機能強化が予想されるでしょう。ただし、Wi-Fi7ではアクセスポイントあたり 2 本のCat6A(カテゴリ6A) ケーブルを使用する必要があります」
新しいWi-Fiの登場に伴って新たなサービスが提供されることで、当然ながら利用者がWi-Fiへ求めるニーズも変化するだろう。今後40年~50年間、同じLAN配線を使用すると想定した場合、20年以上前に制定されたCat5e(カテゴリ5e)やCat6(カテゴリ6)で大丈夫なのか少々不安になる。
「Wi-Fiに必要なCat6A(カテゴリ6A)は、現在市場で最も急成長しているケーブルセグメントです。10GBASE-Tに必要であり、PoE(LANケーブルでネットワーク構築をしながら電力が供給できる技術)に最適な性能を備えているため、ワイヤレス配備に推奨されています。そのため、パンドウイットはベストプラクティスとして、Wi-Fi5以降にはカテゴリ6Aケーブルを推奨しています。
一方、現在小・中・高の子供達は、GIGAスクール構想でCat6Aネットワークを活用しています。しかし、多くの企業ではビジネス用途であるにも関わらず、低カテゴリな製品を選択しているというのが現状でしょう。
したがって、省庁などの公共施設のLAN配線においてもCat6Aの導入がおすすめです」
なぜパンドウイットのUTP Cat6Aはトップシェアなのか?
Cat6AのLANケーブルにはたくさんの種類があるが、公共施設のLAN配線にはパンドウイットのUTP Cat6Aが利用されるシーンが多いという。他のCat6Aとの違いが気になるところだ。
「パンドウイットのCat6A UTPには、ケーブルの外被の内側に『AXテープ』と呼ばれる、シールド材をレーザーによって非連続性に加工した特殊フィルムが巻かれています。AXテープはケーブル径を小さくし、UTP 電磁干渉耐性を維持しながらエイリアンクロストークの影響を抑制します。この革新的なケーブル設計により、ケーブルを緊密に結束して狭い経路やスペースを通すことができるので、柔軟な配線施工が可能です。」
つまり、AXテープによって隣接したケーブル間の電気・電磁結合を飛躍的に抑えることで、エイリアンクロストーク(複数のLAN ケーブルを並列敷設した際、隣接するケーブルから受けるノイズ)や信号減衰に対して優れた効果を発揮するというわけである。高密度アプリケーション環境においても、自在なルーティング設計を可能にするだろう。
「施工性や拡張性といった建物特有の理由から、公共施設のLAN配線にSTPケーブルを採用するハードルは高いでしょう。『UTP Copper Cable with AX Technology』によって実現されたパンドウイットのCat6A シリーズは、業界標準を越えた高マージンとエイリアンクロストーク性能を兼ね備えた高性能・高品質のLANケーブルです。
10G Base-Tによるネットワークパフォーマンスを遺憾なく発揮できるツイストペアは、広帯域でも安定した通信を実現できるため安心して導入していただけます。また、品質管理の国際規格ISO9001 に適合した当社品質システムに基づき 設計・製造され、製品カタログや仕様書に記載された機能・性能を満たしており、導入後もすぐに最適なパフォーマンスを発揮できるでしょう」
これなら煩雑になりがちな公共施設のラック内においても、高いマネジメント性によって安定した運用環境が構築できそうだ。さらに、パンドウイットのCat6Aケーブルには、従来のエコケーブルとは一線を画すテクノロジーが採用されているという。
「これまで多くの施設においてエコケーブルが採用されてきましたが、白化現象やケーブルの柔軟性、価格面なども問題もあり、最近はトレンドが変わってきています。現在の世界基準は、高難燃度ケーブルです。日本国内でも原子力発電所などの重要施設においては、以前より高難燃グレードケーブルが採用されており、2020年度のGIGAスクール構想でも全国の6割を超える自治体が高難燃グレードケーブルを導入しました。パンドウイットでは高難燃グレードのCat6Aケーブルを提供します」
公共施設のLAN配線にはパンドウイットのCat6A UTPがおすすめ
省庁などの公共施設の建て替えは、今後40年~50年という長期間での利用を視野において多くの課題を解決する方法を検討しなくてはならない。中でもインターネットやWi-Fiという重要なインフラを提供するLAN配線には、万全を期す必要があるだろう。
現在パンドウイットのCat6A UTPは、確かな技術力に裏付けられた安定性と信頼性によって、
・Cat6Aケーブル販売数No,1
・Cat6A製品シェアNo,1
・2020年のGIGAスクール構想でもNo,1
・導入自治体数No,1
という業界トップシェアとなっている。長期的に安定稼働できる公共施設のLAN配線を実現したい場合には、おすすめのケーブルといえるだろう。
なお、パンドウイットではエンドユーザー様からのご質問も受け付けております。本記事を読んでCat6A UTPに興味が湧いた方は、ぜひコチラからお気軽にお問い合わせください。