PoEを導入する前に|押さえておきたいポイントや注意点
※この記事は製品や技術にまつわるお役立ち情報=豆知識を意図しておりますことから、弊社製品以外の製品や市場一般に関する内容を含んでいることがあります
LANケーブルを使用して、電力を供給することができるPoE。LANケーブルのみで電力の供給ができるため、受電側機器のACアダプタ等の外部電源を必要としません。
そのため、電源供給に制限のあることが多い屋外や天井等でも電力を供給できるようになり、ネットワーク機器を自由に設置することが可能になります。
とても便利なPoEですが、送電距離・規格選び・電力容量など、導入するにあたって注意しておきたい点も。本記事では、それらの押さえておきたいポイントや注意点について解説します。
給電可能な伝送距離
PoEは、イーサネット規格に準拠しているLANケーブルを使用します。そのため、PoEで給電できる距離は、イーサネット規格の最長伝送距離と同じく100mまでです。
ただし、これはLANケーブル内部の芯線が1本の太い銅線で構成されている「単線」の場合。ケーブル内部の芯線が数本の細かい銅線で構成されている「より線」の場合は、ノイズを受けやすくなるので、給電距離は60~70m程度になるとされています。
また、LANケーブルの品質によっては、給電できる距離が100mに満たない可能性もあります。60~70m以上の長距離で使用したいなら、単線のLANケーブルを使用するのがオススメ。そのほかにも、PoEパススルー対応の延長機器を導入することで、給電距離を延長させることも可能となります。
アクティブ or パッシブPoE方式
PoEには、アクティブPoEとパッシブPoEの2種類に分けられます。
アクティブPoEは、標準PoEとも呼ばれ、接続機器がPoE対応機器であることを確認して電力供給を行います。その反対に、PoE対応機器であることを確認せず、接続機器に直接電力供給を行うのがパッシブPoEです。
どちらも電力供給を行うのは同じですが、その方法は異なります。リモートIP電話・IPカメラ・ワイヤレスアクセスポイントなど常に使用する場合や、非PoEデバイスへの潜在的な損傷を防ぎたい場合は、アクティブPoE方式がオススメです。
PoE対応機器ごとの接続構成
続いて、PoE対応機器の主なネットワーク構成や基本構成を簡単に解説します。
①基本構成
PoEスイッチに、PoE対応の受電機器を直接つなぎます。
②PoEインジェクター
すでにあるPoE非対応のLANスイッチに、電力機能のみを追加することができます。
PoE対応機器と非PoE対応スイッチを併用することが可能で、1~2ポートだけをPoEに対応させたい場合に使用します。
③PoEパススルー
PoEから給電した電力を受電機器自身でも使いつつ、受電機器より下流にあるネットワーク機器にも給電することが可能です。
規格ごとの給電容量(電力容量)
給電容量が表すもの
給電容量は、PoEに接続された受電機器へ供給することができる電力の大きさを示しています。ポート毎のPoEの消費電力と、供給時に想定されるケーブルの電力ロスを合わせたものになります。
この給電容量は、合計で何台の機器と接続するかが関係してきます。給電するための電力がオーバーすると、接続機器が作動しなくなる可能性があります。合計消費量がスイッチの電力容量を超えないように注意することが必要です。
規格による容量の違い
PoEの電力供給は、IEEE802.3afとIEEE802.3atの2種類の規格があります。
・IEEE802.3af 1ポートあたり最大15.4W
・IEEE802.3at 1ポート当たり最大30W
容量によるメリット
大は小を兼ねるという言葉のように、より多くの電力を供給できるほうが良いのではないか?と思いがちですが、給電容量が大きいもの小さいものとそれぞれにメリットがあります。
・給電容量の小さいもののメリット
容量が少ない分、発熱が少なめ。耐久性も高く、安定して稼働させることができます。
・給電容量の大きいもののメリット
多くの電力を供給することが可能なため、複数の接続機器を作動させることができたり、後からの増設にも柔軟に対応できます。ただし、容量が大きい分、発熱量が多いので、冷却手段には注意しなければいけません。
LANケーブルの選び方
LANケーブルには通信速度を表す規格があります。PoEのパフォーマンスを最大にするためには、使用するLANケーブル選びも重要です。
粗悪なLANケーブルや古いLANケーブルを使用していると、ケーブル内部の電気抵抗が高くなり、給電距離が短くなってしまいます。単線タイプ・Cat5e以上のLANケーブルを選ぶことをオススメします。
まとめ
とても便利なPoEですが、機器を購入する前には、伝送可能な距離や接続構成などの基礎知識を頭に入れておきましょう。
また、「導入したはいいけど機器が正常に動かない…」というトラブルを未然に防ぐためにも、電力給電容量やLANケーブルの選び方はしっかりと押さえて、正しい使い方ができるようにしておきましょう。